クレヨン、それからカレンダー

チラシの裏よりすこしひろい

反応の観測、取り落としたスマホを眺める、幻覚を流し込まれる、蛇を踏む(未遂)

ぼんやりというよりはむしろあわあわしていた。週末の話である。

ラヴズ・レイバーズ・ロストの名古屋公演がまだプレイガイドで買えるのが猛烈にさみしくて、「このまえの感想のキャスト感想部分ツイッターに貼ったら人が見てくれるかもしれん、そんで推しサイコーだったなーおもしろかったよなーって思い出して、行けるひとが名古屋行く気になってくれたりしたらいいな…」とぺたぺた貼ったら、思ったよりたくさんの方が見てくださったのでうれしかったが恐縮した。というか、各キャスト感想がそれぞれのファンの方に届いたらよいな、リンク踏むのめんどいだろうしツイッターに貼ったれと思って画像にして貼ったので、ブログのアクセス増えたのは予想外だった。いや多少は読んでもらえるといいなとは思ったがその20倍くらい来たのでびっくりした…。

通知の名前欄に同じ絵文字がたくさんあるの、どれがどのファンダムのものかはわからないが(三浦涼介さんの薔薇だけわかった、「瞬きのたびに薔薇の匂いがしそう」と書いたがほんとに薔薇のひとだったのだな)人が自分の所属するファンダムを表明しているのを見るのが好きなのでラッキー!と思いながら眺めた。絵文字それぞれに推しへの愛とそれをつけるに至る経緯があるのだろう。豊かだ。

 

LLLはとてもハッピーな舞台なので水を差すような解釈をあまり人目に触れさせるのもどうなんだろうなとずいぶん迷ったのだけれど、結果的にはコスタードの健康保険のくだりやっぱり気になる人いたんだな…!というかんじの反応などが観測できたので、やってよかったなと思った。コスタード、基本的に陽気でチャラくて今夜だれのベッドに入ろうか以外の悩みなんてなさそうなナンパ男という感じなのに、曇りのない笑顔で発する「入りたい健康保険!」の一言で一気に彼が属している現実を突きつけてくるの、何度反芻しても最高だ。「腹が減って死にそうなんだ」のときの切実さが嘘のように、ぜんぜん悲壮感もガチさもなくて、ネットミームの「5000兆円欲しい!」みたいなノリで言ってそうなところが本当に刺さる。私がたまたま変なところに刺さってこじらせたんではなく、みんなちゃんとあれ刺さってたんだな…と分かってうれしかった。

 

ハッピーな作品に同時に毒を仕込めるのが芸術の良さだと個人的には考えているけれど、ハッピーなだけでいいというのもまた大事な価値観だから、いまのところそういう方のお邪魔にはなっていないようで安堵している。記事を読んでLLLがもっと楽しく/好きになった、という反応も見えて、それがブログを書いた目的のひとつだったので、まじか!やったぜ!!と思った。5万字、書いてる最中はバグっていたので「5万字か〜ちょっと長いな〜」くらいに思っていたが、冷静になるとだいぶ長い。そんな文章量を読んでくださった方が複数いらっしゃることはありがたいご縁だと思う。

なお、記事を書いた最大の目的は考えをまとめておかないと毎日コスタードのことばかり考えてしまって(お腹すいてないか…寒くないか…楽しく生きてるか…いま幸せか…以下略)リソースが大幅に割かれ生活に支障をきたすからです。非実在青年の暮らしを心配するほど不毛なことはないのに…。今週末で永遠にいなくなるのに…(いまからもうつらい)。

 

というのは照れ隠しで、まあ、単に好きなもののことを延々書いてどこがどんなふうに好きかを噛みしめる時間が好きなだけだ。

 

コスタード役の遠山さんがエゴサして本垢でいいねするタイプでいらっしゃるのは把握していたのだけれど、見つかるなら名前ハッシュタグ付きのほうだろうと油断していたらふつうにツリーのトップ(ブログ記事リンクツイート)にいいねがついたので「見逃してほしかったな…」とちょっと思った。まぁ、ああいうのは単に巡回済の印であって中身は読まないだろうからいいんですが…。もうアナスタシア入れちゃえとチケット購入のもろもろを記入してたら通知がきたから驚いてスマホ取り落とした。そのままスマホをしばらく眺めたのち、拾ってやり直してチケットは無事購入完了した。3月たのしみ。

 

舞台「ドクター・ホフマンのサナトリウム」(2019、KAAT)を観た。とてもおもしろかったが、それ以上にあまりにもおしゃれにのうみそをぐちゃぐちゃされたのでほぼ記憶がない。なんだあれは…。幻覚かと思った。言語化できたら短い感想を書きたいが、いまのところ「のうみそハッキングされた」以外なにも出てこない。なんだあれ…。舞台を観たというよりは脳に直接架空のカフカ作品を流しこまれた感じがした。見当識を喪失したければぜひ観た方がいいと思う。

 

休日に公園を散歩した。人里か森かの二択でいうなら森に属する、あまり文明的でないタイプの公園である。広くて植物が多いのでだらだらと無心で散歩するのに向いている(歩いていると考え事がはかどるので、無心で散歩できるところが好きだ)。先日の台風のあとで行ったら木がめきめきに折れていて、そのなかにいい匂いのするエリアがあったので、また嗅ぎにいこう、ついでにそのあたりのベンチで長々と書いている文章を仕上げよう、と赴いた。

木、折れてるなー、と思いながら歩いていると、足元でなにかが光った。咄嗟に立ち止まると、もともと足を踏み出そうとしていたその着地予定地点に蛇がなめらかに這っている。ぬるりと光ったのは鱗であった。「うわ!!蛇だ!!」と声が出た。人間びっくりすると見た通りのことを口に出すのだな。

カーキと茶色のあいだくらいの、秋の枯れ草と同じ色をした細身で小柄の蛇である。頭がすんなりしていたので毒はなかろうと思う。爬虫類は好きな見た目のものが多く、蛇も無毒無害ならさわりたい。しかしぱっと見毒蛇でなくとも噛まれて雑菌が入るのはこわいし、蛇のほうも人間に構われたくはないだろう。見送っていると林の方へしゅるしゅると去っていった。あまりに見事な馴染み方だったので、「溶け込む」とはよく言ったもので本当に溶解してしみこんでしまったようだなあ、と蛇のいたところを眺めた。もし踏んだらあんな細い蛇一撃で死んでしまっただろうから、可哀想なことにならなくて本当によかった。それに踏んだら母を名乗って家にくるかもしれないし。

折れた木はもうあまり匂わなかった。ついこの間のことのように思っていたが、日が経ったのだなと思った。